臨床宗教師

  臨床宗教師とは

 「臨床宗教師」は、被災地や医療機関、福祉施設などの公共空間で心のケアを提供する宗教者です。
「臨床宗教師」という言葉は、欧米のチャプレンに対応する日本語として考えられました。布教や伝道を行うのではなく、相手の価値観を尊重しながら、宗教者としての経験をいかして、苦悩や悲嘆を抱える方々に寄り添います。 仏教、キリスト教、神道などさまざまな信仰を持つ宗教者が協力しています。
 2011年の東日本大震災を機に、東北大学で養成が始まりました。
 

「避けることの出来ない死の現実と向き合い苦しむ人がいる」

 臨床宗教師の必要性を医師の立場から訴え続けた宮城県名取市在宅緩和ケア診療所 岡部医院 前理事長 故岡部健医師の言葉です。
終末期のがん患者を自宅で看取ろうと在宅医療に尽力し、沢山の患者を看取ってきた方です。
岡部医師は「避けることのできない死の現実と向き合い苦しむ人がいるのに、なぜ宗教者がそこに出てこない!」と語りました。

「医師ではあの世を語ることはできない。」
「現象としての死は語れる。だが、人の人生を含んだ死を医師としては語れない。」
「合理性を超えた事象を、そのまま語れるのは宗教者しかしかいない」

 大勢の患者を看取る中で祈りや「あの世」を求める人々の気持ちに気づき、医療と宗教の連携を模索されました。自らも末期の胃がんを患いながら、亡くなる最後まで遺族の悩みにこたえようと尽力されました。


「布教やお説教ではない。」
「人々の心の苦しみに耳を傾け、心の闇の中から一緒に光を探す行為」

 臨床宗教師の基本スタンスは「傾聴」です。
たとえ言葉がなくても、溢れ出る感情を表情・呼吸・行間・身振りなどから、感じながら心と対話をしていきます。
言葉にならない不安・悩み・苦しみに、一緒に寄り添います。

「死」にふれることは、縁起でもないことではく、大切なこと

 超高齢多死社会を迎えた日本。
 緩和ケア医療 ターミナルケア、ホスピスなどの医療現場において、「生老病死」の苦しみと向き合う臨床宗教師は報道でも目にするようになりました。今後益々その必要性が社会から求められることと思われます。
 「死」にふれることは、縁起でもないことではく、大切なことだと思います。

 平成30年3月に全国初の日本臨床宗教師会認定「認定臨床宗教師」資格が授与されました。
 当寺副住職も「認定臨床宗教師」として人々の苦しみに寄り添う宗教者の一人です。
苦悩の問いに対して、答えはありません。答えの無い問いに対して、どう向き合うか。どう折り合いをつけるか。禅問答同様、日々副住職も悩み続けています。

まだまだ数は少数なのですが、緩和ケア病棟で傾聴活動されている臨床宗教師の報道です。